自己破産

1.自己破産とは

 借金を返済することができない場合に、価値のある財産を処分して借金に充て、残った借金を全額免除してもらう手続きです。

 借金はなくなりますが、財産も一部を除きすべて処分することになります。

2.自己破産のおもな流れ

自己破産のおもな流れ

※各裁判所によって流れは異なる場合があります。

※債権者の数や事案の軽重によって、かかる期間は異なります。

  1. 聴取・受任手続

    借金額と財産、現在の家計状況を聞き取り、どのような方法で債務を整理したらいいか提案します。
    受任する場合は、借金額や財産のわかる書類(請求書や通帳等)をお預かりします。

  2. 受任通知発送

    依頼人の代理人になった旨を債権者へ通知します。
    この弁護士からの受任通知が債権者に届けば、債権者からの取立が止まります。

  3. 破産手続申立

    裁判所へ申立書類を提出します。

  4. 破産手続開始決定

    裁判所が書類の確認を行い、支払不能の状態にあると判断した場合には手続きの開始決定がなされます。
    支払不能とは、債務者が支払能力がないため、弁済期が到来している債務について、弁済し続けていくことができない状態を指します。

  5. 廃止決定

    めぼしい財産が無いことが明らかな場合は手続きが廃止され、財産や債務額の調査などの手続きは終わります。

  6. 管財人選任

    財産の清算をする役目を負う弁護士(管財人)が裁判所によって選ばれます。

  7. 債権調査

    破産管財人が、債権者より届け出された債権を調査し、債権者として認めるかを決定します。

  8. 換価

    破産管財人が財産の売却・換価を行います。

  9. 配当

    8.で得たお金を、7.で認められた債権者の債権額等に応じて平等に分配します。

  • 免責

    債権者から一定期間内に不服申立がなければ、借金を返済する必要がなくなり、また、さまざまな資格制限もなくなります。

3.自己破産のメリット・デメリット

  • メリット

    自己破産し、免責決定を受けると借金を返さなくてよくなります。よって、取立からも解放されることとなります。(弁護士に依頼する場合はご依頼後まもなく取立が止まります)
    破産決定後の給料等は原則として全て自由に使うことができます。

  • デメリット

    各種の資格制限があります。
    また、7年間ほどは銀行などの金融機関から借金ができなくなったり、クレジットカードが作れなくなったりします。
    さらに一度免責が決定したら、その後7年間は再び自己破産をすることができません。
    また、申立をしても、借入れの原因の種類によっては免責されないことがあります。

4.自己破産に関するQ&A

 「自己破産」とは、多額の借金によって経済的に破綻し、支払時期が到来しても、継続してすべての借金を支払うことができない状態に至ったこと(これを「支払不能」といいます)を裁判所に認めてもらい、法律上、借金の支払義務を免れる制度です。

 自己破産の手続には、(1)同時廃止手続と(2)管財手続の2つの手続があります。

  1. 同時廃止手続

    自己破産をされる方に高価な財産がない場合であって、かつ免責についても問題がない場合に、破産手続開始決定と同時に破産手続を終了するという簡単な手続です。この場合には、手続は3〜6ヶ月程度で終了し、自己破産をされる方は原則として裁判所に出頭する必要はありません(京都地裁の場合)。

  2. 管財手続

    自己破産をされる方に高価な財産がある場合や免責不許可事由がある場合等に、別の弁護士が裁判所から破産管財人として選任され、財産や免責不許可事由の有無を調査する手続です。管財手続は同時廃止手続に比べ手続が複雑になり、手続は6ヶ月〜1年程度かかり、裁判所へ数回出頭する必要がある場合もあります(京都地裁の場合)。

 原則として全ての債務が法的になくなりますので、免責決定が確定した後は債権者へ返済する必要はなくなります。
 ただし、例外的に、税金等の公租公課、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償債務、故意または重過失による不法行為に基づく損害賠償債務、養育費や扶養義務に基づく支払債務、罰金などの債務は免責されません。

 ギャンブルや浪費により過大な借金を抱えた場合、財産を隠していた場合、嘘をついて借金をしたなどの「免責不許可事由」に該当する場合には免責が認められないことがあります。

 ほとんどの場合、他人に知られることはありません。
 自己破産をすると「官報」という国が発行している新聞に掲載されますが、ほとんどの人は官報の存在を知りませんし、官報は毎日発行されており、多数の破産者名が掲載されていることからすると、官報から破産した事実を知られることはあまりないと考えられます。

 戸籍や住民票に記載されることはありませんし、選挙権がなくなることもありません。
 破産者の本籍地の市区町村役場の「破産者名簿」には記載されますが、これは第三者が勝手に見ることはできませんし、免責決定を受けると破産者名簿からも抹消されます。

 破産手続中は職業制限が課され、一定の職業に就けなくなります。これを「資格制限」といいます。ただし、資格制限は手続の期間中だけですので、破産手続が終了すると資格制限は解かれます。

  • 資格制限の例:

    不動産鑑定士、土地家屋調査士、有価証券投資顧問業者、証券取引外務員、公安委員会員、質屋、生命保険募集人及び損害保険代理店、商品取引所会員、警備業者及び警備員、風俗営業及び営業所の管理者、建設業者及び建設工事紛争審査会委員、宅地建物取引業者及び宅地建物取引主任者、古物商など

 影響ありません。法律上は、夫、妻、子供は別人格ですので、家族が保証人になっていない限り、家族の借金を他の家族が返済する必要はありません。

 本人が自己破産をして免責されたとしても、それは保証人には何の影響もありません。したがって、本人の他に保証人がいるのであれば、今度はそちらに借金の督促が集中することになります。
 保証人がいる場合には事前にしっかりと説明し、場合によっては保証人を含めた債務整理を考える必要があります。

 賃料の未払いがなければ、住み続けることができます。しかし、賃料の未払いがある場合には、破産すると契約を解除されてしまい出て行かなくてはならないことがあります。

 日常の電気製品や電話加入権などの生活としての必需品、そして一定の財産は換価配当の対象にはなりませんので手元に残すことができます。 また、破産開始決定後に手に入れた財産については、原則として処分されません。ただし、所有不動産については、破産手続の他、抵当権などの担保権の実行によっても換価のために処分される場合があります。ローンが残っている場合やクレジットで買い物をした物品等は、債権者に返さなくてはなりません。
 法人の破産の場合は、電話加入権等であっても、原則として、すべて換価のために処分されます。

 手続が終了すれば、自由に財産を持つことができます。
 ただし、自己破産すると事故情報登録(ブラックリスト)されますので、住宅や自動車についてローンを組んで購入することはできない場合があります。

 以前に免責決定が確定した日から7年以内に再び自己破産申立をしても、原則として免責は認められません。